5年前、学校法人の土地取引をめぐる横領事件で、大阪地検特捜部に逮捕・起訴され裁判で無罪が確定した大阪の不動産会社の元社長、山岸忍さん(61)は、当時、事件の捜査を担当した特捜部の田渕大輔検事(52)が山岸さんの元部下を罵倒するなど、違法な取り調べをしたとして、特別公務員暴行陵虐の疑いで刑事裁判を開くよう求める「付審判請求」を行いました。
大阪地方裁判所は去年、元部下への取り調べは陵虐行為にあたるとしましたが、取り調べの一部にとどまるとして刑事裁判を開くことは認めず、山岸さんは大阪高等裁判所に抗告していました。
大阪高裁の村越一浩裁判長は「机をたたき、弁解を遮りながら一方的に責め立て、大声を上げてどなり続けた。一連の言動は脅迫としても態様や程度が著しく、陵虐行為に該当する。翌日の取り調べも、口調は穏やかであったが、恐怖心をあおる脅迫的な内容だ」などとして、大阪地裁の決定を取り消し、検事を被告として裁判を開くことを決めました。
さらに、14年前の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件をきっかけに本格的に導入された録音・録画が行われる中で取り調べがなされたことに触れ、「検察庁でこの取り調べが問題視され適切な対応が取られた形跡はうかがえず、問題の根深さを物語っている。捜査や取り調べのあり方を組織として真剣に検討すべきだ」と指摘しました。
最高裁判所によりますと、付審判請求が認められ、検事が刑事責任を問われるのは初めてです。